ショットなストーリー

一枚の写真から浮かぶショートストーリー

2019-01-01から1年間の記事一覧

見えざる壁

タイル壁 増殖するタイル壁が目の前をおう。 Kは唸った。 「俺はタイル張りの壁に閉じ込められていたのか」 ・・・ Kは会社に行くためにいつものようにバスに乗った。バスは少し遅れてバス亭に着き、ドアが開いた。KはICカードを読み取り機にピット押しバス…

メガネ

眼鏡 面白い話を聞いた。 先日ある熱い国に旅行に行った人の本当の話である。 ホテルの従業員は部屋に置いてあるセイフティボックスをいとも簡単に開けて、中のものを取った。 セイフティボックスにメガネを預けていた客は、中をみてメガネがなくなっている…

割れた茶碗

割れた有田焼 茶碗が割れた。食器を洗っているとき、石鹸にまみれた茶碗をすべらせて落とし割った。一瞬のことだった。軽く落ちたと思ったのにパリンときれいにちいさな2片を作り割れた。 その茶碗は数年前、ある有田焼専門店で買った。手に取ってみてあま…

その先には何にがある

季節はずれのビーチ ここはサイハテの島、南端孤島の西の果てにある漂流島。 草木も生えぬ荒れ地に枯れ木が一本立っている。流木が西のかなた太平洋から流れ着いたのだろう。海藻の緑が白い砂地に埋められていく。 空と海が交差する水平線、その先になにがあ…

事務所の中のジャッカル

メキシコの守護犬 ある年の初夏の一日。 携帯が静かになった。「ハーイ、何している。退屈でしょうがないよ。どこかに行こうよ」 いつもの気まぐれなウサギからのメールだった。 俺は疲れていた。今日は日曜日。昨日は土曜日、にもかかわらず会社に出勤して…

八本指のエビの足

皿に残されたエビフライの尻尾 猫の指の数が何本あるかご存じだろうか。前足が5本、後ろ足が4本あるのが通常である。 作家のヘミングウェイの愛したネコには前足の指が6本あった。それを「ヘミングウェイ・キャット」と呼び幸運を招くネコだと言われてい…

青空のディスタンス

鉄塔コンビ ちょっと太めのR鉄塔と、細めのA鉄塔が二つ並んでいる。 向こうの山が小さく見えるほどの威風堂々の鉄塔コンピ。 「雨にも負けず、風にも負けず、(雪にも)夏の暑さにも負けぬ」丈夫な鉄骨を持ち、鉄塔は街中の家に電気を送っている。 R「俺たち…

比蛇川の謎

比謝川大橋下の比謝川 K市の中心を流れK動物園の中にある溜め池に起源をもち、K町に下り、東シナ海に流れる、長さ3キロメートルの比謝川は、梅雨時の雨に充分に水分と養分を与えられ、生い茂る雑草・雑木は密林のように川の岸辺を覆っている。 川は、灰…

ピンクの城門

遊び場 公園の階段は赤、ピンク、緑のセメント丸椅子が並び、ピンク色の壁門が段々じょうに延びている。 一匹のサルがピョンと壁門からセメント丸椅子へ飛び跳ねて、空に飛んでいった。 空にはたくさんのサルが浮かんでいる。 足をバタバタさせ、手を水平に…

大人も出ずに居られない街(ディズニーランド)

ネオン輝く街 清三の耳が聞こえなくなったのには訳がある。 清三が、三歳の時である。 母親が添い寝をしていながら居眠りをした。そのあまりにも大きないびきに清三は耳をふさぐしかなかった。耳をふさいでも母親の大きないびきは清三の脳の中にまで響く程で…

三通の手紙が来た

郵便ポスト 三通の手紙が来た。 一通は石川県から、二通目は山梨県から、三通目は福島県からだった。 一日おきの消印だった。送り手は石川県から山梨県、そして福島県と移動しながらこの手紙を送っている。 一通目の手紙は「6月24日は晴れるだろう」と書…

右が左、左が右・・・

カーブミラー 男は車を運転していた。 T字路の曲がり角にさしかかった。男は前方のカーブミラーを見ながら一時停止した。カーブミラーには前方道路の左側に車はなかった。男はT字路をスローで右折する。対向車はない。 その時だ、急に左側から高速スピードで…

赤バナーのレイに囲まれて

赤いハイビスカス そこは三方を壁に囲まれた小さな広場だった。 その小さな広場は、私が友人・Kを訪れたK市にあった。 五年前に知り合ったKはこのK市に住んでいるはずだった。 1 東京で知り合ったKは三年前故郷に帰っていった。せっかく知り合って仲良くな…

ワイワイガヤガヤ

グレムリングッズ 男はゲームセンターに足を運んだ。 何年ぶりのゲームセンターだろう。 昔のゲームセンターとは様子が違う。 小さな子供づれの家族や子供たちが多い。 なんだか健全な場所になっているようだ。 男は一つのゲーム機に目を止めた。 昔映画で見…

影の影響

影を写す 男は影を写した。 影を写して、その形を保存すると光の部分、つまり本物の肉体が滅びないと古書にあった。 自分の影を写し続けると、その影が形を保ったまま肉体の老化を防ぐと言うのだ。 まるで「ドリアン・グレイの肖像」のようだ。 ドリアンの場…

架空座談

三頭会談 A おう、ひさしぶり。 B そうだね。何年ぶりかな? C もう、3年はなるよ。 A もう、そんなになるのか。 C だいたい、そうだね。 B でも、ひさしぶりに会ってもお互いあまり変わらないね。 A いつもここで会って、この椅子にすわって喋っていたな。 …

台風よどこへ

台風一過 台風が過ぎ去った。 雲が動いた。 小さく雲がちぎれた。 でも、今はなだらかに空にただよっている。 酔っているのではない、と思う。 強風に追い付けなかったので、雲は少しだけ戸惑って空をさまよっているのだろう。 秋を呼びたかったから、暑さに…

マンホール地下の謎

消火栓のマンホール ドイツでの「ネズミ救出作戦」をご存じだろうか。 ドイツのとある町で、ネズミの鳴き声(うめき声)が聞こえた。そこを通りかかった小さな女の子が気づいた。太ったネズミがマンホールの穴に挟まて動けなくなって、「助けて!」と叫んで…

羽咋のUFO博物館

宇宙博物館グッズ 数年前、僕は石川県の能登半島に行った。 金沢市の旅行のついでに、近くに有名なUFOの町があるとの情報を得て、訪れた。 そこは羽咋(ハクイ)市である。 駅から歩いて15分、ビックリした(仰天も含めよう)。 なんと博物館(コスモアイ…

赤と黒の表示プレート

トイレはあちら 男はビルの屋上のビアガーデンで生ビールを飲んだいた。 いまだ日の強い夏の話(九月だからもう初秋?)である。 太陽のまぶしい夕方の五時ごろから飲み始めたのが祟ったのだ。陽の下のアルコールは酔いが廻るのが早い。 飲み放題コース、セ…

ちいさい秋 みつけた

小さな紅葉 葉っぱが三枚(+R)赤く染まっていた。 街の街路樹にちさい秋を見つけた。 子どものころ聞いた(歌った)童謡を思い出す。 だれかさんが だれかさんが だれかさんが みつけた ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた めかくし鬼さん 手のな…

宝くじ売り場から見える風景

宝くじと観覧車 宝くじを買ったことがあるだろうか? ほとんどのひとは一度くらいは宝くじを買っているだろう。 それを買い続けるかどうかは人による。 高額当選(1億円以上)の経験があるものは数少ない。それでも高額当選を夢見て買い続ける人は多いだろ…

三角食堂

三角食堂 とある町の三叉路の角地に小さな食堂がある。 二つの車道に囲まれた食堂は瓦屋根の二階建(一部が二階)の一階部分に大きな看板が掲げられている。 「三角食堂」 地形に由来するであろう食堂名ははシンプルで一直線(三角形)である。 ・・・ その…

テーブル番号

はま寿司のテーブル番号 男は一人でその店に入った。 渡された座席番号は44番。 その店は商品が回転しながら客の前に提示され、その商品を気に入った客が勝手に取っていいことになっている。または、タブレットに商品が提示され、注文画面を押すと商品が回…

ペンが並ぶ

水性六角ツインペン ペンが並んでいる。赤。青紫。緑。黒。 規則正しく並んでいるよに見えて、少し、右を見ているペン、左を見ているペン、あるいは隣のペンにもたれかかっているペンなど、長い間店頭に並び疲れているような感じのするペンの整列である。 後…

だれも座らないベンチ

あるバス停のベンチ そこには使い古され年月のたった半分壊れかけたベンチがあった。 だれかが座ったことがあるのだろうか。 長いこと使われていないような気がする。 だれもこの背もたれの欠けたベンチには座らないのだろう。 そこへ、ひとりのおばあさんが…

初めてのブログ開設

残波岬の銅像 今日のブログ講座は、悪戦苦闘の連続。何度も入力画面で失敗した。 この画面にやっとたどり着いて、ほっとしている。 自分だけが取り残された気分で、本当に今日でマスターでき、みんなに追い付いていけるのかひやひや、サスペンス映画並みの心…