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三通の手紙が来た

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郵便ポスト

 三通の手紙が来た。

 一通は石川県から、二通目は山梨県から、三通目は福島県からだった。

 一日おきの消印だった。送り手は石川県から山梨県、そして福島県と移動しながらこの手紙を送っている。

 一通目の手紙は「6月24日は晴れるだろう」と書いてある。

 二通目の手紙は「6月24日は豪雨だ」との予想だった。

 三通目の手紙は何も書いてなかった。「?」の文字が書かれているだけだった。

 すべての手紙が同じ人物の書いたものであるのは宛名の筆跡で分かった。その意味するものは理解できなかった。いたずらで手紙を送ってきたのか。

 宛先の住人Sは考えた。

 三通の手紙が間違って送られたのではない。書いた人の意思によって送られたのだ。その動機は不明だが何かの意図を持って送ってきたのは確かだ。

 6月24日の日付に意味がある。その日の天候に関りがある。「晴れ」で「豪雨」という二律背反の状況を創り出している。さらに、それに謎マーク「?」を添えている。全体的には謎である。

 まず、すべてが謎であることからはじめよう。

 石川県からは「6月24日は晴れ」で、山梨県からは「6月24日は豪雨」で、福島県からは「?」が示された。それぞれ送り手の場所の状況を示していると解釈してみよう。

 「石川県は、6月24日は晴れるだろう」し「山梨県は、6月24日は豪雨だ」となり「福島県は?」とのことだが、前文二通は文意は成り立つが、三通目の福島県はそれ自体が「謎」であり意味不明である。全体をまとめるものがなく謎に包まれる。

 今度は、送られたSの地域の天候状況に関しての予想だとすると、石川県から「Sの地域は6月24日は晴れるだろう」となり、山梨県から「Sの地域は6月24日は豪雨だ」となり、福島県だけはあい変わらず「謎」で終わってしまう。

 前文二通はそれぞれに送り手の天気予想として成り立つが、福島県の「謎」は分からない。

 次は、逆に福島県からの「?」を先に解明して、それから石川県、山梨県に続けるべきだろう。「?」とは謎、疑問符の記号、問いかけ、クエスチョン(ナゾ)になる。「福島県の謎」あるいは「Sの謎」あるいは「Sの地域の謎」あるいは「謎それ自体」。それらのどれかが天候にかかわる事があるのだろう。少し関連があるのは「Sの地域の謎」ぐらいだ。「(Sの地域は)6月24日は晴れるだろう(し)、豪雨で謎(に満ちてる)」ということになる。

 もう少し、分かりやすい文書にしてみると、「Sの地域は6月24日は(朝は)晴れるだろう、(夜には)豪雨になり、謎(の現象がおこる)」という文章が成り立つ。

 直接的な文書にすると「Sの地域は6月24日晴れるだろう、豪雨になり謎が発生する」つまり「Sの地域は6月24日、晴れて豪雨になり謎が起こる」というわけである。

 Sは斎藤という。斎藤さんの住むところは高知県である。

 高知県の有名な何かが関わっているのだ。斎藤さんは長らく考え込んだ。斎藤さんの住む高知県はUFOのよく出る地域として有名である。過去にこんな事件があった。

 高知県高知市の介良地区に手に抱えるくらいの円盤型の造形物を複数の中学生が発見した。その円盤は叩いても傷つかず、水を入れると途方もなく吸収し、ひもで縛って保管しても、発見した元の所に戻ってしまう奇妙な行動を繰り返していた。そのうち突然消え去ったという。

 作家の遠藤周作は後にこの事件を取材している。
  
高知県はその後も多数のUFOの目撃談が残されているという。

 手紙はUFO研究家からのメッセージだった。

 6月24日は天候が異変してUFOが出現するとの情報である。

 手紙を送ったそれぞれの地域はUFOが良く出ると評判の名所のある県である。

 石川県の羽咋には「UFO博物館(コスモアイル羽咋)」があり、福島県貫山には「UFOふれあい館」がある。山梨県は有名なUFO事件(甲府事件)があった。

 甲府市の小学生二人が、ブドウ畑に降り立ったUFOと、乗っているチョコレート色のしわしわの宇宙人と出会っている。飛び立つ飛行物体は大人も目撃している。作家の影山民夫も飛行物体を見たと証言している。

 6月24日はUFOの日だ。1947年、アメリカ・ワシントン州の山脈に9機の円盤状の飛行物体が目撃されている。それが地元の新聞社に取り上げられ、「flying Saucer(空飛ぶ円盤)」と呼ぶようになった。具体的な未確認飛行物体(UFO)の初出である。

 三通の手紙は6月24日はUFOの日であり、空の異変に注意しろとのメッセージだった。