ショットなストーリー

一枚の写真から浮かぶショートストーリー

2020-01-01から1年間の記事一覧

この道はどこに

畑の中の石道 ある晴れた日である。 好天気に誘われて、男は車に乗ってドライブしようと思った。海が見たくなり、西海岸の方向に向けて車を運転していた。 遠くに見える水平線に向かって、道路に沿って運転していると思っていたが、どう間違えたのか、水平線…

13階のエレベーター

エレベーターに写った影 ある週末の真夜中3時を過ぎた時刻の出来事である。 私は仕事での2泊3日の旅行を終え、自分の住んでいるマンションに帰って来た。飛行機が遅れ、こんな時間になってしまっていた。 マンションビルのフロアーに入り、暗証番号を押し…

僕はノラ猫だよ、名前は野良。

ノラ猫の野良 僕はノラ猫だよ、名前は野良。名前は自分でつけた。 誰も僕のことを「野良」と本当の名前で呼ばず、「タマ」、とか「ミケ」とか「ゴロニャ」とか勝手に名づけて呼んでいる。 僕の大好きな魚などをあげるなら、「ニヤッ」と鳴いたりするが、普段…

ピノキオ鳥の綱休み

ピノキオ鳥の綱休み 一羽の鳥が海を渡って来た。何百万海里の海を越えて北の大陸から南の島に飛んできた。 クチバシのとがった三角頭の細身で、まるでピノキオのように木で作られたような、変わった鳥だった。鳥は疲れたのだろう、桟橋に停泊中の船の係留ロ…

楽園

楽園(アンリ・ルソー風?) 南の海にはぽっかりと小さな島が数個並んでいた。 真っ青な空に黄色い太陽が輝き、大きな緑の樹木が生い茂り、真っ赤な花が咲き誇る地上の楽園。 手をのばせば身近に黄色の食べ物があふれ、川には手でつかむことのできる程の無数…

灯台島の謎 2

灯台 2 「財宝箱」は跡形もなく消えていた。 誰があんな重い箱を持っていったのだろうか。Sは朝早く起き、「財宝箱」がなくなったと大騒ぎした。だが、二人は何食わぬ顔でまるで何も無かったかのように、「それがとうした」と平気な顔をしているフリをして…

灯台島の悲劇

灯台 1 数十年前の話である。 その灯台は離れ島にあった。 本島から船で2時間、周辺1㎞の小さな無人島は、海峡が激流のため航海安全用に灯台が設置されていた。3名の灯台守が3か月分の食料、燃料などを積み込み灯台を管理・運営していた。 3月から3か…

戻り橋

橋 隣町M町に行くのには、その橋を渡る必要があった。 その橋はそれほど長くないが、車が一台しか通れない横幅の小さな橋だった。だれもが、昼間でもライトを照らし、軽くクラクションを鳴らし向こう側に合図を送り、車の鉢合わせを防ぐようにしていた。 一…

フライドフィッシュ定食

フライドフィッシュ ある小さな島のお話です。 南の小さな村に小さな港があった。数人の漁民が小さな船で遠くの海まで漁をすることがあった。太平洋の赤道近くの海にまで魚を釣りに出かけるのだった。 真夏の天気のいい日の出来事である。あまりの暑さに水温…

十字路交差点事件

十字路交差点 ー2019年10月1日のことである。 人通りの少ない交差点である。 「車の種類はわかっているのか。」 「まだ、分かっていません。」 すべての車が動き出した。 「どの車に乗っているのだろうか。」 「あの車が怪しいんじゃないか。」 「そ…

金豚が空を飛んだ 3

豚のグッズ ー社会にまだインターネットが普及しない時代のことだよ。ワープロもなく誰もが手書きで文字を書き、家庭に一台の黒電話の時代だねー ーこの島は特に遅れていた。戦争が終わて30年近く異民族に支配され、やっとJ国に吸収されて2年後のころのこ…

金豚が空を飛んだ 2

金豚グッズ 酔いもまわってきた僕はなんだかいい気分になっていた。ここは、ほら話が流通する場所である。あるいは、礼儀としてまず自分のほら話を一篇語るべきかなと変な納得をした。 僕は二人に向かってほ次のような話をした。 「ある日のことです。僕は夜…

金豚が空を飛んだ。

金豚グッズ 『紅の豚』(宮崎駿)の主人公、ポルコ・ロッソは自分の飛行機乗りの経験から言う。 「飛ばねぇ豚はただの豚だ」 だが『不思議の国アリス』では豚が飛ぶことはあり得ないこととして意味づけている。 「わたしにも考える権利はあります」と言うア…

明けもどろの花が咲いた

2020年 遅れ初日の出 2020年、早朝6時10分。 突然携帯電話のアラームが鳴った。 外はまだ暗い。東の海を臨むと厚い雲がかかっているように見える。初日の出は拝めないだろうと思った。 7時ごろになると分厚い雲が白く輝いてくる。 8時を過ぎる…