台風よどこへ
台風が過ぎ去った。
雲が動いた。
小さく雲がちぎれた。
でも、今はなだらかに空にただよっている。
酔っているのではない、と思う。
強風に追い付けなかったので、雲は少しだけ戸惑って空をさまよっているのだろう。
秋を呼びたかったから、暑さにおびえる者を少しだけ涼やかにしたかったのだ。
と、台風は言いたいのかもしれない。
でも、雲さえもおきざりにしてどうする。
と、地上の者は言いたい。
でも、世界は、地上の都合だけではできていない。
と、台風は言うだろう。
でも、少しは地上のことも気にして欲しい。
と、僕は言いたいけど・・・
何も言えない。
・・・
・・・
・・・
そんなことを雲に托して言いたっかたけど。
僕には、台風の怒りを少しだけ感じることができる。
それが、どこに向かうのかは僕も知らない。
♪♪~世界が君の小さな肩に 乗っているのが
僕にだけは見えて 泣き出しそうでいると
「大丈夫?」ってさぁ 君が気付いてさ 聞くから
「大丈夫だよ」って 僕は慌てて言うけど
なんでそんなことを 言うんだよ
崩れそうなのは 君なのに
~
取るに足らない 小さな僕の 有り余る今の
大きな夢は 君の「大丈夫」になりたい
「大丈夫」になりたい
君を大丈夫にしたいんじゃない
君にとっての 「大丈夫」になりたい~♪♪
(『天気の子』挿入歌「大丈夫」RADWIMPS )
僕はこの壮大な歌の歌詞「君」を「台風」に置き換えて考えてみた。
台風よどこへ行く。
僕は、台風にとっての「大丈夫」になりたいと願った。
すると突然、突風が吹き、僕の体は中空を舞って、地球の外に出た。
台風が小さく渦を巻いて地表を旋回しているのが見える。
台風は一生けん命に地上の水分と温度を調整しているのだった。