ショットなストーリー

一枚の写真から浮かぶショートストーリー

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

事務所の中のジャッカル

メキシコの守護犬 ある年の初夏の一日。 携帯が静かになった。「ハーイ、何している。退屈でしょうがないよ。どこかに行こうよ」 いつもの気まぐれなウサギからのメールだった。 俺は疲れていた。今日は日曜日。昨日は土曜日、にもかかわらず会社に出勤して…

八本指のエビの足

皿に残されたエビフライの尻尾 猫の指の数が何本あるかご存じだろうか。前足が5本、後ろ足が4本あるのが通常である。 作家のヘミングウェイの愛したネコには前足の指が6本あった。それを「ヘミングウェイ・キャット」と呼び幸運を招くネコだと言われてい…

青空のディスタンス

鉄塔コンビ ちょっと太めのR鉄塔と、細めのA鉄塔が二つ並んでいる。 向こうの山が小さく見えるほどの威風堂々の鉄塔コンピ。 「雨にも負けず、風にも負けず、(雪にも)夏の暑さにも負けぬ」丈夫な鉄骨を持ち、鉄塔は街中の家に電気を送っている。 R「俺たち…

比蛇川の謎

比謝川大橋下の比謝川 K市の中心を流れK動物園の中にある溜め池に起源をもち、K町に下り、東シナ海に流れる、長さ3キロメートルの比謝川は、梅雨時の雨に充分に水分と養分を与えられ、生い茂る雑草・雑木は密林のように川の岸辺を覆っている。 川は、灰…

ピンクの城門

遊び場 公園の階段は赤、ピンク、緑のセメント丸椅子が並び、ピンク色の壁門が段々じょうに延びている。 一匹のサルがピョンと壁門からセメント丸椅子へ飛び跳ねて、空に飛んでいった。 空にはたくさんのサルが浮かんでいる。 足をバタバタさせ、手を水平に…

大人も出ずに居られない街(ディズニーランド)

ネオン輝く街 清三の耳が聞こえなくなったのには訳がある。 清三が、三歳の時である。 母親が添い寝をしていながら居眠りをした。そのあまりにも大きないびきに清三は耳をふさぐしかなかった。耳をふさいでも母親の大きないびきは清三の脳の中にまで響く程で…

三通の手紙が来た

郵便ポスト 三通の手紙が来た。 一通は石川県から、二通目は山梨県から、三通目は福島県からだった。 一日おきの消印だった。送り手は石川県から山梨県、そして福島県と移動しながらこの手紙を送っている。 一通目の手紙は「6月24日は晴れるだろう」と書…