ショットなストーリー

一枚の写真から浮かぶショートストーリー

フライドフィッシュ定食

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フライドフィッシュ

 ある小さな島のお話です。

 南の小さな村に小さな港があった。数人の漁民が小さな船で遠くの海まで漁をすることがあった。太平洋の赤道近くの海にまで魚を釣りに出かけるのだった。

 真夏の天気のいい日の出来事である。あまりの暑さに水温も上昇し、海上温度も50度にもなっていた。

 釣り上げた魚が海から釣り上げた瞬間、太陽熱に焼かれ、まるで煮魚になったように釣り上げられたのだ。

 漁師はビックリして、その魚をそのまま海に戻そうとした。でも、もうお昼時期なので、昼飯にでも食おうかとそのまま食べてみると、ほんとに美味しい、塩煮魚の味がして、骨のまわりまで食べられるほどであった。

「こりゃ簡単だ、さっそく煮魚定食いただき!」と漁師は次々に釣り上げた魚を食した。

 でも、困ったことになった。釣り上げた魚がすべて煮魚でしか釣れないとすると、生のまま港にもっていくこともできず、冷凍保存もできない。今、即食べる以外に何のてだてもないと、漁師は大変困ってしまった。

 その夏はずっと、島近海では平均30度以上の暑さだった。赤道近くは50度以上が続いていた。

 村一番の知恵者、チブルジョウトーに相談すると、長いアート―トーウートウトーの果て、次のよううなハンジが出た。

「これは、海の神様が魚は生で食べてはいけないと言っているのだ。これからは、生の魚を食べず、必ず、焼くか、煮るか、蒸して食べるようにしよう」

 このハンジ(裁定)から村人は、釣った魚をあらためて焼いて、煮て、蒸したものを出荷した。

 するとどうだろう。村で出荷した魚が、この世にない美味しい味で色が赤いので「カラーフィッシュ」として世界中から賞賛の声が聞こえてきた。

  特にから揚げ魚にするため、海水50度で煮あげされた魚をもう一度180度以上の高温でゆっくり揚げると、骨までがカリカリ・ジュワジュワー、とろけるような味色で、なぜか高級松坂牛の味がするのであった。骨から出る骨汁がたまらなくとろけるのだった。

 村の周辺には、定食屋ができ、それぞれの店で魚料理を出すとどこも繁盛して、村は「漁村兼食の名店村」として世界中から観光客が殺到した。

 村人が釣る魚は、なぜか、太平洋近くに行かなくても近海で釣れるようになった。村人の一生懸命さに魚がついてきたのだろうか。

 太平洋上での海上高温50度ではなく、この小さな島周辺の海では30度だけど「カラーフィッシュ」は釣り上げられている。

 村の釣り人にツイてきているのだ。

 その「カラーフィッシュ」は沖縄では「グルクン」と呼ばれている魚ではないかと思われる。「グルクン」は通称「タカサゴ」と呼ばれている。

 ためしに、筆者は一度煮つけしたグルクンをもう一度180度近くの油でゆっくり揚げてみた。すると、本当に美味しいグルクンのから揚げが出来上がった。お頭から尻尾まで食べられ、骨も残さず全て食べてしまった。

 写真は、その証拠にお頭だけを残して記念に撮ったものである。

 骨までカリカリ食べられたが骨汁じゅわーとはいかなかった。やはり「カラーフィッシュ」とは違うかもしれない。

 いつの日にか「カラーフィッシュ」の骨までカリカリ・ジュワジュワーの味見をしたいものである。